● ー肥後相良藩の古都ー 人吉は球磨川あればこそ
2010 年4 月1 日に最初の生ヤマセミを撮影して以来、赤い繊月橋左岸奥の矢黒神社に撮影時の安全とヤマセミ遭遇祈願を願って詣でている。最初にお参りをした5 分後にヤマセミの声が聞こえて撮影できたので、それ以来勝手に「ヤマセミ神社」という事にしている。その後も来る都度最初にまずお参りをするが、実質3 年の間に9 度も交尾を撮影できるなど、御利益は絶大、ものすごいパワースポットだと思う。実際、由緒深く国宝青井阿蘇神社の2~3 年後には既に矢黒神社も建っていたという。戦いの神様を祭ってあるそうでヤマセミにはぴったり。佇まいも奥が深く杜も非常に趣のある神社だからお参りすればたぶん何かを感ずるだろう。
ヤマセミの撮影に人吉を訪れる際はその10 日ほど前から日本気象協会10 日間予報を視て滞在中の撮影日程や撮影場所を考える。行く前2~3 日雨が続けば着いた時には川は増水し濁っていよう。本流に流れ込む主な支流で一番濁らないのは胸川、次が万江川、
最後に川辺川となる。雨が降った後しばらくは合流地点では濁った球磨川本流ときれいな支流の境がはっきりとしたまま3~400m 並行して流れる。これらを想定して撮影場所と時間を決めていく。
宿で朝目覚めて最初にやる事は、霧が出ているか否かの確認だ。霧が深ければまず1~2 時間は晴れないから撮影に成らない。人吉の霧は単なる川霧ではない、熊本からあるいは鹿児島から高速で人吉インターに着く前に見ると盆地そのものを乳白色の霧が埋めつくし、湖の様になっているのが見える。画像左側の最下段は濃霧の中球磨川本流の岩に留まるヤマセミ。しかしこちらは霧が有ろうがなかろうが、朝食はコンビニのおにぎりと決めている。カップみそ汁におにぎり3 個。魔法瓶に2 杯分のコーヒーを入れてもらい狙ったポイントへ車を走らせる。そこでどんなに寒くても、車の窓を開けてヤマセミの声が聞こえるようにして朝食を始める。
しかし、今だかって順調に落ち着いてすべてを食べ終えた事はない。必ず途中でヤマセミが現れるか、声がするので中段してしまう。だからカメラは朝食の前に準備しなければならない。
こんな事をもう4 年も続けているが、良いシーンを収められた時は最高の気分になれる。
人吉は球磨川を中心に文化も産業も成り立ってきた。全国的に見てもこれほど川から恩恵を得ている所は少ないのではないか? 川魚漁を中心に球磨川下り、鮎釣りその他の遊漁者対応産業など、単なる温泉・料理・名所旧跡・祭り目当ての観光産業に隠れているかもしれないが、球磨川のもたらす影響は少なくない筈。温泉も由緒ある旅館もひな祭りにしても全国の他の地域に形は違えど似たようなモノは存在する。しかしこれ程ヤマセミが飛び回る清流は人吉盆地限定、川辺川・球磨川に敵う清流はない。もっともっとこの清流の持つ魅力、実力をPR しても良いのではないだろうか?
此処で蛇足ながら、自分も人吉に行ってヤマセミを撮影したいという方へのご案内。
球磨川も川辺川もまずは漁業関係者の仕事場、同時に球磨川下りという名物産業の営業スペースだ。
誰のモノでもないヤマセミを撮影するのはもちろん自由だが、川で営みをする人々の長年培って来た施設・おきて・常識などは守らねばならない。いきなり行ってもどこでどうすれば遭えるか判らないだろう。スカイツリーと違って行けば判るものでもない、
日本野鳥の会熊本県支部・人吉支部の方に伺うなど地道な下調べなくてはとても出遭えるものではない